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緋色に染まる天、暁の空

無限&銀雨用日記 あるファンタジー世界に生きる吟遊詩人の少女 あるいは、IFの現代日本に生きる霊媒士の少女 彼女たちの日々の覚書。 判らない人は要、退却~。

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暗いまどろみ

兄さまの夢を見て、目が覚めた。
繰り返し聞かされる、教えられる…夢の中でまで 言われるとは思わなかった。

外が明るい、きっと鎌倉に居れば とっくに起きて居なければいけない時間なのだろう。

「気持ち……悪い」

起きようと思ったが、全身が気だるく力が入らない。
首の後ろがぞわぞわする。
そして、胃のあたりがむかむかして とにかく、気持ち悪かった。

「……やる事なンて無いもの、丁度……良いわね」

きっと、熱が出ているんだろう。
誰かが来るまで、このまま寝ていよう 何もする気が起きないのだし、早く治す必要もないのだから。

…誰も来なかったら、風羽兄さま以外に誰も来なかったら…



「私には本当に きっと、何も無い 価値の無いって 事になるンでしょう、ね」

貴方はきっと否定してくれるけど、その貴方を振り払ったンだもの……
あぁ、床の軋む音がする……また、風羽兄さまが……
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兄さま

思い出させてやろう

空っぽのお前と言う人となりを、深都貴

何もないお前に、居場所を与えたのは誰だ? 私だろう

生きる術を教えたのは誰だ? 私だろう

――違うわ


 

そうだ、何もないだろう お前には 奈都貴にはあっても

お前には何もない 他に縋って生きるしかない

私は本当は優しいのだよ これ以上お前が誰かに縋って

迷惑をかけないように こうして身内で納めなくてはいけないだろう?


――違…


 

何もないお前が人様に迷惑をかけるなんて とんでもない

ただただ 人の真似をして 仮面をつけてやっと立てるお前が

 


―だって…それは 仕事だからって

 


だから、これが一番良い方法だ

解らなくていい 何もないお前には解らなくていい

考える事は全部私がやってやろう

昔のように


―――これが、一番良い方法 なの? …そうよね


 

ごめんなさいごめんなさい 云う事聞くわ

風羽兄さまのモノになるから


 

私は影のままでいいから

馨り

着替えなくちゃ…

起動が解ければ、洋服。
本家には異質過ぎる姿。――まるで、今の私。


着物を用意し着替えて、ふと 机を見た。
長く、この部屋に居なかったのに 埃も被っていないところをみると
居ない間もちゃんと掃除をして、管理してくれていたのだろう。


――あれ?


何気なく弄った小物入れから、異質な物が出てきた。
これは…

「ネクタイ…ピン?」

着物が基本の花乃宮に、まして私の部屋の、私の小物入れの中。
ありえないありえない

でも、これは……


「香水が付いてる? …あ、………めぐる…の」

どうして、ここに貴方の馨りがあるの?
諦めようと、忘れようと思ったのに…


頬を伝うものを拭う事も出来ず、ネクタイピンを抱き込む。

――その馨りに優しく抱かれた気がした。

さよなら

御車センパイを『起動』してまで、振り切って 京都へ向かった。
カードでお金を引き下ろして、新幹線へ。

―携帯すら置いてきたから、公衆電話で 兄さまに『お願い』をした。

もう、聞かないと もう、逢えないと 思っていたのに、
京都駅に居た 旋…。


手を、取れない 応えれない
ごめんなさい

兄さまに手出しはさせないから、兄さまを私が見張るから
だから

さよなら

▼ ただいま

…貴方の声が、好きだった

声を聞いたら、もう 迷わなかった。

降りしきる沢山の優しさ、愛情、声、大きな手、同じ色の瞳、考え方、好み、 全部好きだった
だから

さようなら


私の事は、忘れていいから

幸せな泡沫の夢をありがとう ――私は、私のあるべき場所へ

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